納棺式についての心構えのお話
人が亡くなると、お通夜、告別式が行われる前に必ず行われる納棺の儀というものが行われます。
これは棺桶の中に亡くなられた方を納めることを指します。
ちなみに……「ヒツギ」という言葉はあまり意識せず使われている方が多いかと思いますが……
棺(ひつぎ)
→故人の入っていないときの呼び方
柩(ひつぎ)
→故人の入っているときの呼び方
●棺桶に使われる棺とは中身の入っていない容れ物のことを指します。
●一方「柩」は漢字を見ていただくと、人が入っていることが見てわかりますように亡くなられた方が入っている棺桶のことを指します。
そもそも納棺って、なんとなく「棺に亡くなった人を入れるだけのことでは?」と、漠然としていてよくわからない方もいらっしゃることと思います。
葬の助はここで納棺の意味をより多くの人に知っていただき、納棺がいかに故人との最後の貴重な時間であるのかを、もう少しだけ意識をしていただければ、かけがえのない一瞬のひとときを過ごせるのではないかと考えます。
納棺の一連の流れ
●厳密にいうと故人のお身体を清め、身支度を整え、化粧を施しお棺にお納め、旅の準備を完了する儀式であり、故人がこの世からいなくなったことを受け止めるとても大切な儀式です。
●地域や葬儀社によって異なりますが、お棺の底には「おくり畳」と呼ばれる棺桶専用の畳や「納棺茶」と呼ばれる粗めに挽いたお茶を敷き詰めることもあります。
●お清めは身体を逆さごとで作ったぬるま湯(水にお湯を足して作る)で拭いたり、消毒をしたりします。葬儀社やお寺、自宅等で湯灌(ゆかん)をする場合もあります。
●身支度は基本的には白装束(旅装束(たびしょうぞく)経帷子(きょうかたびらともいう)をお着せすることが多いですが、今は和服、スーツや洋服、好きだった服装へとお召替えすることも増えてきております。まだ少数ですが、生前からご自分の最期の衣装のためにラストドレスをオーダーされる方など増えつつあります。
●化粧(エンゼルメイク)は病院で施しをされますが、ほとんどが納棺のタイミングでお化粧を一度落とし再度死化粧を施します。
とまあ、上記のような内容は調べれば誰でもわかる内容ですよね。
葬の助が伝えたい納棺の本当の大切さ
我々納棺師は、遺族の方にいかにして納棺をしてしまうまでの『時間の尊さと大切さ』を伝えられるのか……
●大切な方がお布団で眠る最後の時間だということ。
●棺に納められてしまうまでの「カウントダウン」がはじまったんだということ。
●基本的には最後のお別れのときまで蓋は開けられないということ。
(ドライアイスの冷気を保つため、また柩に掛け物が掛けられたり、祭壇飾りなどが柩を囲むこともあるため)
●納棺後は基本的に顔窓のフィルム越しからしか顔を見れないということ。
●柩の中では布団をかぶるので胸元より下(手足、全身の姿)はもう本当に見れなくなってしまうということ。
だからしっかりと目に焼き付けて。
ということは……そう!
納棺が終わるまでのあいだが故人のお身体に触れられる最後の時間なのだということです。
意外とこの現実をわかっていないまま蓋を閉めてしまうご家族は、悲しいことにたくさんおられます。
※しかし担当さんに相談すれば開けてくださることもありますので、諦めないでくださいね。遅れてくるご家族のためにも「蓋、開けてもらえませんか?」と、相談しちゃってもいいのです。もちろん、あくまで故人のお身体の状態によりますから断言はできませんが、短時間ならば開けてもらうことも可能な場合が多いです。これもぶっちゃけ担当さんによります。
昔はお柩の蓋が開かないように釘打ちをしたものですが、現在では通常では釘打ちなどは一切いたしません。
次に蓋が開くのは『基本的には』お葬式の終わるころ、出棺の前です。葬儀の勤行が終わりお別れをするこの時間はとても短くあっという間に過ぎてしまいます。号泣したり、花を入れたりしているうちに、最愛の方の頬に触れるということを忘れているうちに……。
しかし現実は…
納棺の時間は慌ただしく過ぎ去り、喪主を含めご家族は打ち合わせや親戚への連絡やらと本当に大忙しです。
そんな最中にこれほど大切な儀式が行われるのですから、よほど意識をして過ごさなければ、気がついたときにはお柩の中に納まってしまった……ということも少なくありません。
ちなみに!
化粧や身支度が終わってから『棺に納めるまで』にかける時間は葬儀社にもよりますがだいたい10〜30分程度です。中には身支度が終わってから納棺の儀だけで2時間をも時間を以上かけてくれる葬儀社もあります。(疲れが出ているご家族にはこの時間は少し負担のような気もしますが、それほど大切な時間だという考えの葬儀社さまなのでしょう)
もちろん、どうしても立ち会えないということも現実的にあると思いますが、なるべくご家族には立ち会っていただきたい時間ですね。
そして可能であればぜひ、身支度のお手伝い、お納めなどにもお手伝いをいただいて、故人の重みなどをその手に感じていただきたいなと思うものです。
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