エピソード集

湯灌納棺・エピソード002 90代女性/お釈迦様の誕生日と不思議なほくろ

 

 

彼女の納棺は四月、桜が満開に咲きほこる花まつりの日だった。今回は納棺のすこしばかり不思議なおはなし。

 

 

 

大きな神棚

この日お邪魔したのは、ご生前に深く信心されたという尊い故人さまのお宅です。(もちろん、どの方も尊いのですが……!)

 

通された和室には小さなおばあちゃまが寝ておられました。障子の向こうからは明るい陽光が差し込み、お部屋の中にはたくさんの御親類の方々がいらっしゃいました。

 

故人さまの枕元には代々大切にしてきたであろう立派な神様? このごく普通のお宅には一見大きすぎる印象の神棚のようなものが祀られていました。
その大きさたるは、ゆうに1mを超える横幅と、高さは女である私の背丈を越える。
後にも先にもこれほど大きな祭壇のような神棚?はこのご自宅で見たきりです。そこには新鮮な大根や白菜、酒や米などが丁寧にお備えされていました。

 

この神棚と言うには大きすぎる祭壇の前にて、私は作業を進めておりました。

 

 

二人の立会人

隣の台所では来客にお茶を出したり、軽食を準備するような音。あくせくと葬儀の準備に追われ廊下を行き交う喪主。
そんな賑やかな雰囲気の中で、故人がおられる和室には二名の女性が残られ、終始私の仕事を見守っていただいておりました。
すると二人はどちらからともなく故人様のことを語り出しました。

 

「お母さん、いい顔してる」
「ほんと。神様に仕えてしっかり信心したからかしら」
「本当に穏やかだわ」
「不思議ね」

 

どうやら故人さまはとても信心深かったようです。それはこの神棚を見れば明らかだった。

 

 

おでこのホクロ

そんな会話を横目で聞きながら、お化粧を施しているときでした。私はふと、故人さまのおでこの真ん中にくっきりと存在するホクロが気になりました。
シミはもとより、普段はお化粧で消すかどうかすら聞かないホクロですが、あまりにもくっきり存在感があるそのホクロが、妙に仏様のおでこのソレのように縁起の良いものに感じました。

 

お化粧でカバーするのは気が引けたのですが、本人が気になっていた可能性もあり得るので、一応聞いてみることにしました。

 

「あの、失礼ながらこのおでこのホクロ、お化粧でカバーさせていただくこともできるのですが…… 正直、とっても縁起が良さそうなので、私はこのままでよいのではと思うのです」

 

すると思い出したように娘と思しき女性は答えました。

 

「ええ、そうなの! そのホクロね。それがね、不思議なの…… 昨日亡くなってから浮き出てきたんです。それもどんどん濃くなってくっきりしてきたわね」

 

「本当不思議よね〜」二人は首を傾げます。

 

「ええ??そんなことがあるんですね???」

 

私は驚きを隠せず、もう一度おでこのホクロをまじまじと見つめました。

 

そのとき、桜が満開に咲いたお寺で子供のころ学んだことを思い出した。

 

そうか、今日はお釈迦様の誕生日だ!

 

 

なんとなく腑に落ちた私は、ようやく返事を返しました。

 

「そういえば、花まつりの今日はお釈迦様の誕生日ですね。信心しておられた故人様は本当に仏様になられたのかもしれませんね」

 

「ええ???お釈迦様の!?そういえばそうだったわね…… じゃぁホクロはそのまま置いとかないとね!」

 

そういうと二人の女性はニコッと微笑み、意見は一致したようだ。

 

「では、ホクロはこのままにさせていただきますね」

 

私は、心の中に神様はいると思いながらも、宗教には属さない無宗教者だ。この仕事はどんな考え方にも沿わないといけない。
一定の思想論や価値観しか持っていないのでは、きっと片寄った仕事になるような気がするのです。

 

 

葬の助の解釈

それにしても、不思議なこともあるもんだ……と、心底思わされました。

 

いやいや、そうは言っても……たまたま浮き出ただけかもしれないし、本当に信心した亡き人が、花まつりの歓迎ムードの中で仏様に迎え入れられたのかもしれない。

 

しかし、真剣に考えるとおかしな矛盾もあったりする。
この家は宗派的にも神式の家で、神様をお祀りしていたのだし、仏式であるお釈迦様の概念とは違うのでは?

 

と、いう疑問も残ります。

 

こういう神秘的な分野の話はいくら頭を捻ってみてもわからない……

 

わからないなら都合の良い解釈をしてみてもいいじゃない?

 

お浄土や天国や霊界がもしも同じ一つ。
神様やブッダやキリストがもしも同じ一つ、なのだとしたら。

 

説明はつく。のかもしれない。

 

などと、心の中で都合の良い解釈をしてみたり。

 

この春爛漫のなか、大往生して賑やかにおくられたこの方は、きっと行くべきところへ逝ったのだから。

 

と、今回はそんな春の最中に出会った尊いおばあちゃんのおはなし。

 

 


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