亡くなる前の様子
80代男性のその最後は、なかなか思うように動かない体との戦いだったようだ。
何年か前、糖尿病を患ってよくこけるようになった。ちょっとしたことで体中にアザが出来るようになった。
しっかり食べるタイプのお父さんだったそうだが、1ヶ月くらい前からほとんど食べなくなった。気がつくと点滴で栄養を摂る日々の中、みるみるうちに痩せてしまった。
食べなくなって早かった。そういえば糖尿病を患った数年前から、ちょっとしたことで疲れを訴えるようになっていた。と、娘さんはいま振り返る。
死因は末期の腎不全が致命傷であった。
立ち会いは故人の娘さん
少し気の強そうなしっかり者で、都会風の女性は故人の娘さんでした。今回の湯灌(ゆかん)のお立会いはその方のみで、お母さまは認知症のため一人で葬儀会館にまで来させられないとのことだった。
ちなみにお母さまを迎えに行っているのは他県に住む弟さんらしかった。
最期の傷
故人は最後に転んだようで、片目の周りと顎のあたりに紫色に染まったアザがあった。腕や足にも打撲痕がある。
痛々しい傷やアザを目にすることは我々の日常であるが、決して痛がることのない亡骸はまるで涼しい顔で眠っていて、むしろ痛みから解放されたような良い顔をしておられることが多い。
こういうときいつも考えてしまうが、痛みを知る前に息を引き取ったのか否かは我々の知るところではない。
定年後の仕事と趣味と楽しみ
故人は定年してから五年間アルバイトにも勤しんだ。その後、趣味の写真に没頭し、今じゃ認知症の母と夫婦で仲良く念願の海外旅行にたくさんいったのだとか。主にヨーロッパのほうに訪れたようでした。
「行きたかったところほとんどは叶ったんじゃないかな。ナイアガラの滝にも行ってたみたい」
娘さんは真顔で、半分無関心にそうに言いました。
「父は特に優しくなかったですね、でも怖いとかそういうのではなくて、私たちの言いなりで、ふんふんって気弱そうに返事をするような父でした」
海外旅行のほとんどがツアーに相乗りする形だったが、ナイアガラの滝では説明をするバスガイドさんの話を無視しては写真を取って、ツアー中も一人行動をしては写真を取っての繰り返しで、申し訳なさそうなお母さんが「もう、お父さん!バスガイドさんに失礼よ」と言っていたそうだ。
これは個人的な推測でしかありませんが、普段家では虐げられていたお父さん、カメラを持って旅行に出かけるときだけは自由を満喫出来ていたのかもしれない。
父と母を襲った糖尿病と認知症
晩年は泊まりでの旅行は体力が持たず、日帰り旅行で精一杯だったそうだ。
自宅の食卓に座るときもまっすぐに座ることができず、背中を丸くして頭も支えられないくらいにその筋力は低下していたそう。
「糖尿病って怖いですね」と、娘さんがポロッと声にしたように、1つの病気に積み重なる別の病はどんどんと容赦無く命を蝕んでいくのだろう。
急なご不幸でした。
だけど、せめて体力のあるうちに、認知症になる前に、夫婦で行きたかった場所に行けたこの方は幸せだったのではと思う。
ちなみにご納棺の際の副葬品は「特にないです」とのことだった。
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