湯灌納棺・エピソード007 90代女性/海に生きたおばあちゃん、夫婦で同じ命日

 

 

海の見えるご自宅

 

今回は地方のお得意先からのご依頼。

 

招かれた場所は、海の見える海岸沿いの古いご自宅でした。

 

開け放たれた玄関を通り、初夏の空気と潮の匂いが南風に背中を押されて我々は和室へと案内されました。

 

故人の部屋にはすでに数名の親族と近所の人が集まっていた。

 

合掌を済ませ白い顔伏せ用のガーゼをめくると、良く日に焼けた故人が眠っておられた。

 

 

海女だったおばあちゃん

美容師の孫に化粧をしてもらった可愛くなったおばあちゃま。

 

よく日に焼けて、深いシワが年輪のように入ってはいるが、年齢の割に肌の綺麗な方だ。

 

最近食べることができていなかったようだが、体もさほど痩せておらずよくしっかり硬直もされている。

 

優しくご硬直をほぐし、洋服へとお召し替えをする。そのとき左手首の上にうっすらと小さな引っ掻き傷が治ったような跡の部分に何気なく目がいった。

 

着替え終えると、故人の左手と右手を丁寧にヘソの上で重ね、私は改めて関心した。

 

「女性といえどよく働いたような大きく分厚い手をしているなあ」※葬の助の心の声

 

思わず質問を投げかける。「故人さまは畑仕事が何かされておいでだったのでしょうか?よく日に焼けておられ、体つきなんてとてもご年齢を感じさせませないものですから」

 

「いやぁ、もっぱら海だったよ!海苔採ったりワカメ採ったりね!ワッハッハ!」

 

故人は農家ではなく海女だった。驚く私をよそに、ごきげんな様子で長男さんが故人さまに声をかけはじめました。

 

「ばあちゃんお気に入りの洋服着て良かったの~。今からコメリ(スーパー)行ってくるって言いよるようじゃの!」

 

まあとにかく豪快に笑う家族だ。そして会話が弾んで葬の助も笑う。

 

 

田舎のご遺体の傾向

それにしても、仕事柄さまざまな場所へ伺うため、都会と田舎との違いを痛感させられることは実に多い。
田舎の人は知らない人でもすぐ溶け込ませてくれる。壁や隔たりがないのが本当に温かい。

 

そして亡くなられた人も田舎の人は比較的綺麗だ。それには、いくつか考えられる理由があるが、ひとつには過度な延命治療などを行わない(設備環境が身近に少ない)ことが言える。もちろん、そういった方ばかりではないが、実感としては確実に、闘病して頑張ったとわかる亡骸がなぜか比較的少ないのだ。

 

 

生活環境のちがい

また、高齢まで畑などで働いていることが多く、ボケることも少なく長寿で身の回りのことはなんでも自分でするため、家で生活が出来る。親族や家族が共に生活をし身近にいるので少々の面倒は見てもらえるのだ。よってデイサービスなどの施設の利用はお楽しみ程度で済む。

 

一方都会ではそうはいかない。少し足が悪いだけでも少ない家族は仕事で忙しく老後施設へ行くことを余儀なくされる。都会の施設は比較的綺麗な建物で色々な催しなどもあり、それなりに楽しめると聞きますが、家に帰ることが出来ずそのままそこで最後まで暮らすことも珍しくない。

 

 

おばあちゃんらしい化粧

故人は海でのりや海藻を長年に渡り採ってきたので、これでもかというほど日に焼けていた。ファンデーションは男性用のオークルを使わなければいけなかった。「お化粧なんてばあちゃん生まれてはじめてじゃない?」なんて言われながら見守られる故人さま。普段化粧をしていない人だったならと口紅はナチュラルな色を選ぶ。

 

 

よい人生の面影

年輪を感じさせる古い佇まいの家に色あせた畳の和室。孫やひ孫の笑い声。縁側で近所の人が心配そうに見ているなか、ありとあらゆるおばあちゃんの思い出の物に囲まれて眠る姿を見ていると、よい人生だったのだろうと伝わってくる。

 

 

亡くなった原因

ある日、左手首の上を竹で引っ掻いてしまったおばあちゃん。着替えのとき見つけた左手首のあの傷から破傷風を患ったという。

 

その傷は本当に舐めたら治るというくらいの傷だった。

 

とても長寿で元気だった人が、まさかの死因による最期だった。破傷風って怖い病なんですね。調べてみるとたとえ小さな外傷でも油断できずどこででも感染リスクはあるようですが、年齢が高くなると破傷風にかかりやすいそうです。

 

ワクチンは10年くらいで効果が薄れるそうだが、高齢者は特にワクチンを受けていない方が多く、受けていても効果が薄れていたりするようなので気をつけなければいけない病気の1つということでしょう。

 

 

破傷風とは

決して田舎に多い病気という訳ではなく、猫や犬に噛まれて発症することもあるようです。
これらは予防接種である程度防ぐことが出来るので、めんどくさがらず受けなきゃいけないのかもと思いました……。

 

それでも、小さな傷を負ってしまうことってあると思います。そんな時はほとんどの方が傷口を綺麗に洗って止血、消毒、ガーゼ等で保護されることと思いますが……実は、この消毒という行為そのものが間違いであると聞くとあなたはどう思いますか?

 

もし身体のどこかにキズを負った場合、なによりも水による洗浄が一番大事であり、それ以外に破傷風に聞く効果的な処置はないとさえ言われているほど、ほんとうにこわい病気なのです。万が一感染した場合は外科的な対処が望まれます。予防接種を受けることも大事ですが、日々の中で起こる小さな傷への適切な処置(水洗浄)と、危険性を改めて知り心がけることが大切なのかもしれません。

 

▼トップアスリートの方が推奨する正しい傷の処置に関する記事がありましたのでご紹介させていただきます。

「本当の傷のケア方法を知ってください」

 

 

海女さんの納棺

お気に入りの洋服、カバン、帽子を持って、普段しなかった化粧をしてのお旅立ち。

 

この手持ちのカバンには『秘密の物』を入れて納棺しました。

 

海グッズなどは特にお入れされず、やはり女性らしく最期はお買い物に行く格好です。

 

 

命日の不思議な偶然

このおばあちゃん。なんと45年前に亡くなったご主人と同じ命日にお亡くなりになったそうです。

 

親族もそれを聞いてたいへん驚かれていました。

 

365分の1……ですもんね。それは驚きます。

 

45年前か、随分若い頃にご主人をなくして頑張ってこられたんですね。

 

何はともあれ、この故人も今ごろ亡き夫と再会しているといいな。

 

 


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