はじめに
人が亡くなるとそのお身体に衣をお着せし、お化粧を施したあとお棺へお納めをします。
火葬をしてお身体がなくなってしまうまでは、このお棺(棺桶)の中でお眠りいただくことになります。
今回はこのお眠りになる棺桶についてのはなしです。
時々、狭所恐怖症の方などで「こんな箱の中に入れられてかわいそう……私は狭い所が本当にこわくてね、だから自分のときは棺に入れて欲しくない。そのままで火葬してほしい」などとおっしゃられる方がいます。
しかしながら、お棺に入れないことには火葬場で受け付けてはもらえません。
お棺には色々なグレードがありますが、葬儀社によって取り扱っているお棺やタイプは異なります。
もし、「とりあえず安く済ませたいから」との理由で、一番下のグレードのお棺を頼んだとしても、葬儀社によって同じ「下のグレード」の定義は異なります。
ですので、今回は棺桶の意味や価格、また効果や棺桶選びのポイントなどをズバリ記事にまとめてみたいと思います。
棺桶の意味
亡くなられた方が入る箱のこと。
(人ひとりが入る大きさの箱)
またその形式名称は寝棺(ねかん)という。
●そのまま焼骨するため、国内では大半の棺桶が木棺(もっかん)・木製タイプである。
●石造りの棺桶は石棺(せきかん)と呼ぶ。
●昔は座棺(ざかん)という棺桶の形状でした。火葬文化が広がる前、男二人が棒で担いで運びやすい形を求められていました。また、土葬に適していたために座棺は使われた。ちなみにこの樽型の座棺から『棺桶』という言葉が生まれたと言われている。
棺桶の規格サイズ
まず、主流な棺桶の素材にはもみの木、桐の木などが燃えやすく好まれています。
棺桶のサイズは火葬場の窯の規格が180㎝であることが大半のため、よほど大きな故人でない限り180㎝の棺桶で納めることが普通である。
※180㎝以上の棺桶が入る窯がある火葬場は現在限られた地域しかない。しかし、昔の日本人にくらべて身長が伸びつつあり、今後は徐々に大きめの窯も増えてくるでしょう。
では、
ちなみにどういった方が180㎝以上の棺桶を用意されるか?とギモンを持つ方もいるでしょう。例えば……
●お相撲さんまたは横に体格がいい方
●身長の特別高い方
例えば175㎝の故人ですと、一見180㎝の棺桶に余裕で入りそうに思われがちですが、亡くなると人の足は筋硬直を起こし足の指まで伸びてしまいます。その分10㎝ほどが長くなるのです。
ということは、170㎝ある方が入ると棺桶の中に余裕は無くなってしまう計算です。
(足先と頭が付くか付かないか)なので、175~185㎝の方ですと、足の膝から曲げて組んだ状態にし、少しあぐらをかく形に近い姿勢となります。それ以上大きい方だと特大棺を用意しなければいけない可能性が高くなります。
こう聞くと180㎝という規格そのものが随分小さなサイズであるような気がしてきます。それほど現代の日本人の身長が高くなったというなのでしょう。
棺桶の種類
【タイプは4種類】
●ごくシンプルな木棺タイプ
[サイズ小]
顔窓が極小で側面のサイズ(横幅)も細め。長さはきちんと180㎝ある。ふくよかな方だと合掌を組むことが出来ないこともある。利点は安価であること。取り扱っている葬儀社の方が少ない気がします。
(正直ゆったり眠る空間を目的とはされていない印象)
[サイズ中]
一般的にどこの葬儀社でも取り扱っているタイプだろう。余分なものも、無駄もなく、ごくシンプルな棺桶。横幅も「サイズ小」に比べてゆったりめで長さは180㎝。顔窓のタイプは正方形型(首元までしか見えない)であったり、長方形型(胸元まで見える)であることがある。それも葬儀社によって取り扱っている棺桶は違う。
[サイズ大]
上記でお伝えした特大棺はこの木棺タイプであることが多い。見た目は「タイプ中」とほぼ同じ。
●布張り=外側に飾り布が綺麗に貼られたタイプ。
(色、模様は多種多様さまざま。大ぶりで鮮やかな刺繍が入っているものもある)
内側側面はレースやプリーツが施されて豪華な仕様。
取っ手付き(飾りもの)タイプもある。
蓋は10~15㎝程度の盛り上がりがあることが多く、まひなどで体が前屈に曲がってしまった故人や、体育座りのような姿勢で亡くなられた方など、平な蓋の棺桶では物理的に蓋ができない場合にも用意される。
●組立式の棺桶
簡単に組み立てる事が可能な棺で、保管場所にも困らず非常に安価である。家族葬でよく使われるタイプで、木製、布張り共に有り。
組立式であっても、とても可愛い装飾やカラーの布製棺も存在しています。安価な分、よく見ると普通の布製棺桶に比べて作りが安っぽく見えないこともありませんが、素人目で見てわかるものではないレベル。
しかし大切なお葬式において簡易的な組立式棺桶を嫌う葬儀社もあって、取り扱っていない場合も多々あります。
●五面彫刻などの彫り物が入っているタイプ。
潔く木目を前面に見せる棺桶で、角には金色の装飾金具が打ち付けられている。
2面または5面に飾り彫りが施された貫禄のあるフォルムで、年配者または年齢関係なく男性の方に選ばれていることが多い。
棺桶自体の重量は重めで、側面の木ががっしり分厚いので内部スペースは布製棺に比べ狭め。
●ドーム型棺桶
布張り製の棺桶より豪華な仕様。蓋がドーム型になっており、顔窓も大きいものだと胸下辺りまで見える。更に通常ですと、顔窓を開けると薄い透明なフィルムが張ってあるのですが、このフィルムの内窓がスライド式の物だと蓋を閉めたままでも顔窓からお顔を直接ご拝顔したり、触れたりすることが可能。
●エンバー棺
エンバーミングを行った場合にはドライアイスなどの保冷方法が必要なく、バタンと半分に折りたたんで開けるような蓋の棺桶がある。冷気が逃げる心配が不要なため蓋は閉めずに開けたままにすることも可能。エンバーミングをしていなくてもこのエンバー棺を推奨している葬儀社も存在します。(直接故人に触れることが可能なため)しかし、エンバーミングをしていない場合はしっかりと蓋のある棺でドライアイスの処置をし保冷保存することが大切です。
■エンバーミングの内容と効果[亡くなられた方のお身体を修復する圧倒的な技術]
●キリスト棺
・船型
・山型
・箱型
主にこの3タイプがある。船型はドラキュラに出てくるような形のもの。素材もベルベット調のものから光沢のあるものまである。
●漆塗り棺
美しい絵が描かれているもの、また色は赤や黒などがあり光沢がある。素手で触ると指紋が付くので扱う者は白い手袋を装着しなければいけません。重量も重いです。
●けやき調の棺
木目が美しく著しい光沢がある。深いブラウンの木目が高級感漂う。
●特上ビロード棺
柔らかで上品な手触りと深い光沢感が特徴の棺で、扱いの難しい素材なので縫製には高等技術が必要です。
●子供用の棺桶
[一尺]
長さ300mm×巾220mm×高220mm
[二尺]
長さ600mm×巾300mm×高260mm
切断部分のみを火葬する際にも使われることがある。
●海外空輸棺
海外でお旅立ちされた故人のお身体を厳重に守り、飛行機で安全に帰国するための専用の棺桶。諸外国の規制もクリアした素材で作られており、完全密封した内箱を強固な外箱で覆うという徹底ぶり。
●エコ棺
阪本龍一さんが企画したり、新しい棺の形です。間伐材を有効活用、CO2排出量を1/3カットするなどを実現。1棺につき10本の木がモンゴルに植林されるそうだ。
●ダンボール棺
噂で聞いたことがある程度で、葬の助自身実際は目にしたことはありません。紙で出来ており、燃えやすいことと、二酸化炭素排出量が少なくエコであること。金具や接着剤不要などが利点である。価格は5万円と聞いたが、紙製でこの価格だとエコにこだわる人でなければなかなかチョイスしない気もする。
また、どうしても金額を抑えたいという方は手作りしてしまうという方法もありですが、実際は手作りのお棺にはまだお目にかかったことはありません。
※その他にもペット棺などもありますが、葬の助では省かせていただきます。
棺桶の価格
基本的に、高級木材である『桐』を使用したものや、取っ手や刺繍など様々な装飾が施されたものほど高価になります。
※価格はお手頃な物で5万円前後から、10万円台~20万円台が主流。30~60万円台などもあります。さらにさらに高級なものになると驚くなかれ100万~300万といったものもざらに販売されています。
棺桶だけを購入するという機会はあまりなく、多くの場合は葬儀の一環として、葬儀社の方が手配されます。
棺桶に納めて得られる効果
●故人のお身体における保冷、防臭、腐敗の遅延。
●遺族の心が故人とのお別れを受け入れるひとつのステップ。
●感染予防
棺桶を選ぶポイント
[結論] 選ぶ際は身長の10~15㎝くらい余裕のあるものを選ぶと良い。棺のサイズは 1尺=30cm 6尺=180㎝ 6.25尺=187.5㎝ 6.5尺=195㎝
葬儀社によっては頻繁にサービスでランクアップしてくれる所や、きっちり取るものは取られる所があります。
よく下調べをしておければいいのですが、ろくな下調べなく急なご不幸があり、よく知らない葬儀屋さんでお葬式をするとなった場合、提示されたパンフレットの棺桶以外の知識があれば役に立つかもしれません。もし思ったお棺が在庫の無い商品であっても、場合によってはすぐに取り寄せてくださるかもしれませんよ。
安らかにお眠りいただくためにできること
《香水》
香水やコロン、アロマなどで故人の好きだった香りを振りかけてあげる。また、果物のレモンは棺内部の香りを消臭してくれる効果もあります。
《おくり畳》
棺の底部に敷く棺桶用の畳。い草の良い香りが立ち込め、日本らしい香りの中でおやすみできる。別料金はかかるが、病院で亡くなり家に帰ることを望まれていた方々のお葬式において特に近年その需要は増え続けている。
《納棺茶》
納棺用に作られた粗めのお茶で、葬儀社により行われる所と行われない所があります。意味合いとしては、昔お釈迦様が荼毘にふされたとき、お弟子さんたちが御釈迦様の棺に香木を敷き詰めたことをならって行われている。今は香木は高価で手に入りにくいため日本人なら嫌いな人が少ないお茶の葉を敷き詰めるようになった。これは納棺前、お身内の手によって棺の底部に敷き詰められます。(納棺の儀の一部)
効果としては、ドライアイスの湿気取りや消臭効果などがあります。
《コーヒー豆》
納棺茶のコーヒー版
非常にまれなケースですが、お茶よりコーヒーが好きだったと、納棺茶の代わりにコーヒー豆を敷き詰められることもあります。
《高級納棺布団》
葬儀社によっては納棺専用の高級布団が販売されています。棺内部は床面は硬く冷たく、布団は薄手の綿打ちのものがほとんどな中で、この高級布団はとてもふかふかで優しく故人を受け止めてくれます。
《ご本人愛用の枕》
素材に問題なければお棺にお入れできます。
ただし、高さに無理がある場合は頭下に入れるのはお断りされることがあるかもしれません。
《クッションや毛布》
足元(膝の下)にクッションやご愛用の毛布など(その地域の火葬場が厳しいかを確認しましょう)
また、お顔窓の開け閉めに関しては、基本的に遺族の自由ですが、
日中は開けておき、夜は閉じるなど故人の安らかな眠りを配慮するのも良いでしょう。
さて、今回はお棺に関してまとめてみましたが、お葬儀屋さんによっては『高かろう悪かろう』『安かろう良かろう』などが存在している分野であると思います。
これらを踏まえて消費者が忘れてはいけないことは、お葬式にお金がかかるのは当然なこと。お葬儀屋さんの仕事はあくまで『サービス』です。どんなサービスやどんな気配り心配りならいくら支払えるのか?ご自分のなかで少し意識されるだけでも良いのではないでしょうか。
ここまでお棺の種類に関してお話してまいりましたが、葬儀社により取り扱っている棺はある程度決まっています。▼希望がある場合は事前に相談するべし。
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