湯灌とは別物/エンバーミングの内容と効果[ご遺体を修復する圧倒的な技術]

 

 

注※この記事は亡くなられた方のお身体に関する保全についての内容となります。お心が辛くなられる方はどうぞ購読をお控えください。

 

エンバーミング[embalming]

「亡くなった方のお身体に防腐、殺菌、修復などの処置を施し生前の姿に近く戻す技術」
今回は日本でも徐々に認知度が広がって来たエンバーミングについて調べてみました。
エンバーミングとは、もともと古代エジプトから始まり、復活を信じる者たちを中心に広がったもので、科学的、外科医学的な方法によって故人のお身体を生前の姿のように修復し処置を施す技術のことである。

 

このエンバーミングを行う者のことを『エンバーマー』と呼ぶ。
彼らは専門技術者だ。

 

処置技術だけでなく、医学知識や技術を習得し、葬儀のこと、遺族の心のケアでもあるグリーフケアの知識や経験も必要になります。
ちなみに、試験は国家資格より難しいとか。
エンバーミングの大きな特徴である体の防腐。一度処置された体は安らかな姿を保ち続けるといいます。
無菌状態となりますので、たとえばお別れの際何の心配もなく故人に触れることが可能になります。

 

《エンバーミングの効果》
日本のエンバーミングは常温で大体20日くらい保存が効き、長いと3週間以上美しい状態を維持できるそうです。

 

アメリカでは9割の亡くなった方に施すと言われているエンバーミング。アメリカは土葬の為、空気中に認められる移るような病であったり様々な危険を防ぐことも重要な目的とされている。

 

また、アメリカのエンバーミングは半永久的に保存が出来るとされ、外国の著名人レーニンやマリリンモンローなどは当時と変わらない姿で今も眠り続けているとか。日本では伊藤博文もエンバーミングされていたなどと聞いたことがあります。

 

しかし、日本では残念ながら息を引き取ってから50日以内に火葬および埋葬することを証明しなければエンバーミングは出来ないようです。(ちなみに日本のエンバーミングは半永久ではないようです……)

 

まだ発展途上な分野ではあるものの、大手葬儀社では湯灌よりもエンバーミングを強くオススメしている場合もあります。
施術料金は保険適用外となり、全額負担で20〜30万円程度かかります。
9割以上が土葬ではなく火葬である日本で爆発的に普及する分野かといえばはっきり言ってNOでしょう。
とはいえ……

エンバーミングは旅行中、または遠方で亡くなられた方にとって画期的な保存方法です。
また、げっそりと痩せ細ってしまった方もふっくらと元気だった頃のように戻られるといいます。
(注※ただし触ったお肌の質感はかなり独特なものです)

 

故人のお身体の変化を遅らせるだけではなく、修復まで出来てしまうというのは、改めて素晴らしい技術だと感じます。

 

葬の助としても、とっても憧れる技術ではあります。
エンバーマーの方は影ながら修復するお仕事なので、同じ故人の身支度を整える職種といえど、湯灌納棺師とは全く次元の違う世界です。恐れ入ります。

 

 

エンバーミングの必要性

そんな素晴らしい技術ですが、費用は湯灌の2倍以上かかります。日本では火葬まで通常2~3日の保存ですね。相当長くても5日ほどでしょう。亡くなったことを知る発見が遅れた場合を含むと最悪お葬式をあげるまで亡くなられてから2~3週間経っていることも稀にあります。
確かに状態は変化し続けますが、中には2~3日くらいでは見てわかるほ状態が悪化していない方もたくさんいらっしゃいます。

 

亡くなったあと体の変化には個人差がある。

 

と、いえばアバウトな表現ですが……

 

亡くなられた原因やその状況によりお身体の変化は変わります。
また、たとえば、ご高齢で自然な形で安らかに亡くなった方のほとんどの方は綺麗な状態が維持されます。
なぜ、自然な形で亡くなられた方の状態はよいのか。なぜ、そういう方が減っているのか。
それは延命医療の発達のため、病院で亡くなる方が全体の80%となり、病院での処置によって延命治療を施された体は『自然な命の終わり』を迎えられないことが多くなっているからと言われています。

 

ともあれご状態の良くない故人さまにとってはエンバーミングは最後の砦のような存在です。
では、もしそうではない『安らかな状態』であるならば、エンバーミングは本当に必要だろうか。

 

 

エンバーミングを選ぶときの三つのポイント

1.長期保存

 

2.特別な修復

 

3.故人さまの尊厳を守るため

 

 

正直に言うと、この三つが求められるとき以外は、特に必要ないのではないかと葬の助は感じます。

 

このように今回ご紹介してきた影の努力者エンバーマーとは違い、湯灌納棺師は、直接遺族とコミュニケーションを取りながら、表情づくりなどを進めるものです。葬の助の場合は家族の方の顔の特徴、雰囲気などを汲み取りながら表情作りやメイクを施していきます。エンバーミングほどの劇的な修復は不可能かもしれないですが、親戚、友人、家族に囲まれるその時間はかけがえのないものです。
この湯灌の時間は、小さなコミュニティで生きている日本の風土にとても合った空間であると感じます。

 

故人さまのお身体修復のもう一つの方法『湯灌』とは……?

 

■湯灌(ゆかん)の意味・形式の違いと費用相場から一連の流れまで

 

■湯灌(ゆかん)は参加型の儀式、その効果とは?遺族が今求めているもの

 

■湯灌師(ゆかんし)が手袋をつける理由/感染の危険を知っておこう

 

亡くなった人の口に入れ歯を入れるのは変?納棺師の葬の助が真実を教えます

 


 

 

エンバーマーと納棺師の思いはきっと同じ

エンバーミングと納棺師の仕事、同じ分野とはいえ次元も技術も違いはあり、得られるモノも違うのかもしれません。
しかし同じ分野の施術に携わる人間として『家族の方に喜んでほしい』『故人さまの尊厳をお守りしたい』この気持ちはきっと同じだと思う。
今回ここに記載したエンバーミングの記事をご覧いただき、1人でも多くの方にお別れの際の悲しみを取り除く手段として、こういったもうひとつの選択肢があることを知っておいてほしいのです。

 

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