亡くなった人の口に入れ歯を入れるのは変?納棺師の葬の助が真実を教えます

 

 

今回は「歯」の話をしよう。

 

我々が生きていく上でとても大切な歯。生まれながらに歯の強い方、弱い方がいるとは思います。

 

 

中には部分的な入れ歯をつけておられる方、または全部の歯を失い総入れ歯にして生活している方が思った以上にたくさんおられることを、納棺師になってはじめて知るに至りました。この数は本当に驚きでした。

 

→葬の助の仕事「湯灌納棺師」

 

葬の助は亡くなられた方の口元の整形なども行っていますので、様々なお口の状態を統計に取って記事にしております。

 

 

少しでも元気な時のお顔に

家族を失った方にとって、亡くなられた方のお顔を少しでも元気なころの姿に戻してほしいと思うのは常。しかし、その方法は実に簡単ではない。

 

顔色は化粧でなんとかカバーできたとしても、重力で落ちる顎や頬の皮膚はどうしようもできない。
病気で20㎏や30㎏も痩せこけてしまった方を元気だった姿に復元することも然りだ。

 

限りなく復元を望むならばエンバーミングしかないだろう。しかしこれは高額であるし、すぐに火葬をしなければいけない日本では、その件数は増え続けてはいるものの、まだまだ一般的ではないのが現状だ。

 

■湯灌とは別物/エンバーミングの内容と効果[ご遺体を修復する圧倒的な技術]

 

そんな中、我々納棺師はとても原始的な方法ではあるものの、故人が放つ独特な雰囲気「悲壮感」を取り除き、自然で安らかな表情作りを施すことが可能だ。

 

これは当然特殊な技術も含まれているので、看護師さんがいくらエンゼルメイクや、死後の処置なるものを施しても仕上がりは全く異なる。

 

 

エンゼルケアとの違い

納棺師の仕事と看護師さんの行うエンゼルケアがなぜ違うのか。大きな理由は、臨終後すぐの状態から12時間後~24時間後、そして数日、数週間……と当然ご遺体は変化し続けるものだからだ。

 

看護師さんは、生きておられた方の看取りからその後のお世話までをするとても尊いお仕事です。が、そのエンゼルケアは一時的な「納得」を得るものでしかないのだ。また、時間の経ったご遺体を扱うケースがないため死後変化に対応する術を知らないという理由が挙げられる。

 

この看護師さんのお気持ちにより苦労して「入れ歯」を入れてくださることが実は一番多いケース。

 

開いたままで心配だった口元、入れ歯をいれてもらってホッとしたご家族ですが、だんだんと目には見えないスピードでお顔の印象が変わってくるのを悲しみの中で目の当たりにしていきます。

 

 

実際の入れ歯事情

もちろん、入れ歯を入れたまま最後までいいお顔をして旅立たれることもしばしばあります。(この場合お肌のしっかりした若い方であることが多い)

 

しかし、入れ歯というものは数日外していただけでも歯茎の形が合わなくなったりするもの。
ひどい時は何ヶ月、何年も入れていなかった入れ歯を心配されて持ってきてくれるご家族もいらっしゃるのです。
そこまでして口をふっくらしてあげたい、閉じさせてあげたいと思うのです。

 

中には強引に入れて、すでにぐらぐらで上手く装着されていない場合や、喉の奥にスコンと落ちてしまって入れ歯の意味をなしていない場合。
はまっていないどころか、飛び出して出っ歯になっている場合。などなど、様々な入れ歯事情がそこにはあるのです。

 

 

口元で印象は180度変わる

もちろん、場合によっては入れ歯を入れたまま整形することもあります。

 

●過去の写真を見るとニカッと笑う写真ばかりだった方なら歯が見えていた方が本人らしい。

 

●本人は常日頃から入れ歯をつけていて、すごく気にされていた。

 

●家族がどうしてもつけてあげないと心配だと強く気にしておられる場合。

 

上記のようなこだわりが特にないようであれば、正直入れ歯は外して含み綿で整える方が自然に仕上がるのでおすすめしています。

 

普通納棺師であれば、口を触っただけで、ある程度の期間入れ歯を入れていなかったかわかります。
しばらくつけていなかったのであれば、合わない入れ歯はつけると違和感が出るものです。

 

入れ歯はプラスチックなどの人工素材です。痩せた歯茎や、亡くなって弾力を失った皮膚、重力で落ちた頬などに合わせてくれません。
歯茎にぴったりハマってくれたとしても、実は出っ歯に見えたり、口が大きく見えたり違和感があるのです。(家族の方はあまり気がつきません)

 

 

答えはご遺族の中にある

これまでの話は、あくまで葬の助の観点からの意見にすぎず、やはり正解などないのが真実かもしれません。
斎場で火葬した際、入れ歯が喉仏を汚したり傷つけないようにするのが優先か、本人が気にしていたことを優先するか、入れ歯をつけるより見た目の顔をより自然にすることを優先するか?
奇しくもこれらを選択をするのはどんな場合も、故人本人ではなく遺族側だ。

 

もし我々から見て違和感があろうとも、家族の方が納得しているのであればそれは「良し」なのです。

 

逆に、我々が見て「良し」と思っても家族の方に違和感があるようであれば、それは「無し」なのです。

 

「答えはご遺族の中にはある」のがこの仕事なのだ。なので、我々はこの基本的な姿勢は崩さず、ご遺族が故人の死に対し少しでも納得を得られるようにお手伝いするんだ。という気持ちは忘れてはいけない。
ここでは、あくまで納棺師としての「実際の気持ち」を書き綴っているということを理解してほしい。

 

 

ご遺体に入れ歯をはめるデメリット

ご遺族の想いも肯定しつつ、一方で入れ歯を入れたまま口を整える際のデメリットがあることも伝えておかなければいけないでしょう。

 

●火葬をしたときに口元で焼け残ってしまう場合があり、プラスチックなどが溶けて大切な喉仏に付着、または傷つける恐れがあること。
(実際火葬場でも入れ歯は外してくださいと言うところもある)

 

●今後口が開いてくる可能性が高くなる。(死後硬直が緩むため)また、入れ歯があることで開いたまま閉じられない可能性が高くなる。

 

●今ははまっていても、時間が経つと外れて落ちてしまうかもしれないリスクがある。

 

●プラスチック製なので、亡くなった方のお顔の変化に対応できず違和感が出る。

 

 

入れなかった、外した入れ歯はどうするの?

残したところで処分に困る入れ歯は、多くの場合お柩へとお納めされます。その場合もプラスチックの入れ歯ケースから出して燃え残らない紙や綿で包むなど徹底します。基本的に身体からできる限り離して足元へ納める。

 

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■日本における火葬の始まり(歴史)と土葬の終わり・火葬場の仕事

 

ただし、先述したように火葬場によっては入れ歯は入れてはいけないものとされている場合もあります。
それでもどうしても入れ歯を入れたい場合、ココだけの話ですが、首の下にこっそり入れ歯をしのばせて、あえて「入れ歯を外せなかった」程にする場合も実はあるようです。

 

 

大切な自分の歯は財産

 

早ければ50代で総入れ歯にした方もいれば、100歳でも自分の歯がビッシリ残っていることもあります。

 

歯質の問題もあるでしょうし、日頃の手入れの仕方もあるでしょうが、自分の歯って本当に財産だなぁと感じます。

 

長生きで最後まで自分の歯でボリボリ食べて来た人、幸せですよね……。

 

かと思うと、中には入れ歯なんか嫌だ!といって、歯茎でボリボリなんでも食べていた人もいらっしゃいました。

 

色んなパターンがありますが、食べることって本当に大事!食べることが進んで出来なくなってしまうと、人はたちまち弱ってしまいます。生きるための「歯」ですもん。

 

ちなみに葬の助は、個人的に銀の詰め物が溶け出してアレルギーを引き起こしていたので、詰め物を無害なものに総入れ替えしたりしましたが、実際長年悩まされてきた皮膚が改善されたので銀の詰め物の恐ろしさを身を持ってしりました。

 

脱線しちゃいましたが、若いうちから歯のメンテナンスは怠らずしっかり保っていないとな……と思いますね。また、虫歯は放置すると命に関わる病を引き起こすこともあるのです。

 

歯医者さんですが、こまめに定期検査を行う方が結果としてお金がかからないと聞きます。放置して大きな治療を行う方が高額の治療費がかかることを思うと、早期治療、定期検査がとてもとても大切です。

 

 

こうして治療費のことを考えると、自分自信の歯がいかに財産であるかも実感しますよね。

 

まさに歯の健康は、命の健康である。

 

歯が健康でなければ、総入れ歯にしてでも命を守らなければいけません。
葬の助も自分の歯がダメになったら、迷わず総入れ歯にしようと思っています。でも、出来れば相応に年老いてからがいいな~苦笑

 

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